コントユニット「ラーメンズ」として、俳優として、テレビや舞台で大活躍の片桐仁さん。そんな片桐さんが、粘土作家としても活躍されているのをご存じですか?忙しいお仕事の合間を縫って、15年間つくりつづけている生粋のクリエイターなんです。
作品や道具へのこだわりから、相方・小林賢太郎さんと一緒にデザフェスに参加した時のレアな思い出話まで、たっぷりとものづくりのお話をうかがいました。

片桐仁片桐仁(かたぎりじん)

1973年生まれ。埼玉県出身。多摩美術大学在学中に小林賢太郎と共にラーメンズを結成。
以後舞台を中心にテレビ、ラジオなど、様々な分野で活動している。
俳優業のかたわら、1999年より粘土を用いた造形作家としても活躍。現在も『FRIDAY』にて粘土作品の連載を行なっている。今までに作品集 を2冊出版したほか、2013年4月には渋谷パルコにて個展を開催、18日間で1万3000人を動員。以降、札幌、大阪でも個展を開催。
片桐仁さんの粘土作品を見る!»

稼いだお金でプラモデルが買いたい

今まで140点以上の粘土作品をつくってきたんですけど、やっぱりプラモデルとかも作りたいんですよ(笑)稼いだお金で何が買いたいかっていうと、プラモデルが買いたいんですよ。でもガンプラつくってると締め切りに間に合わないんですよね……。だからもう全っ然つくってなくて!

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プラモデルはどういうプラモデルをつくるんですか?

(食い気味で)ガンダムですね。もうガンダムしかつくる時間がないですね。ガンダムは最初から色がついてるから色も塗らなくていいんでね、組み立てるだけのジグソーパズルみたいなもんです。あとはヤスリがけ。全部塗るのは時間がなくてできないですねえ。

実は今日のカメラマンの山本が大好きなんですよ、ガンプラ。

好きなんですか!?何買いましたか、最近。

(山本)マスターグレードのジェスタと、カトキハジメのニューガンダム買いました。

あー!ニューガンダム作りました?!フィン・ファンネルの平面処理が大変……

(山本)デカールも小さすぎてポロポロ落ちちゃいますしねー!

そう!あれすっげー大変ですね。……ターンX出ますよね、もう出たのかな。サザビー買いました?僕はお店で箱持って、大きすぎて買うのやめました。

(山本)サザビーはもう少し腕が上がってからと思ってます!デカいのだと80cmぐらいのネオ・ジオングも出ましたね。

ネオ・ジオング!!買います?あれ。デカすぎますよ~。
こういう話大好きなんですよ、『月刊ホビージャパン』で8年ガンプラの連載してましたからね。あん時は毎月1個作んなきゃいけなかったから粘土とガンプラの両立がすっげー大変で。
もうホビー界は飽和状態で、ガンプラはバンダイがモデラーの上を行き過ぎちゃってる。バケモノですよね。

(山本)それ今「ええい!連邦軍のモビルスーツはバケモノか!」って名言にかけたんですか?

あ、いや、かけてないです、シャアの名言ね(笑)

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ガンプラ話が一番盛り上がってる……!粘土とガンプラは長年やってらっしゃいますが、ほかにハンドメイドでやってみたいことはありますか?

僕、昔はシルバーアクセサリーとかよくやってましたよ。アートクレイシルバーなんかが出てくる前からロストワックスっていう作り方があるんですけど、ワックスで型をつくってお店に持ってったら、グラム20円くらいで鋳造してくれるんです。ちっちゃいサイズなら500~600円で作れますよね。いやあ、シルバーアクセサリーってこんな簡単なんだと思って、ええ。いっぱい作りましたね、一時期。昔、耳の形のピアスをつくってたんですよ。

耳の形!つけると耳が4つになってるように見えるってことですか?

そうですそうです。実物大から少しずつ小さくしていって色んなサイズをつくったんですけど、人間っておもしろいもんで、小指大ぐらいになって初めて可愛いって言われますね。実物大は気持ち悪がられる(笑)
耳好きなんですよ、三木富雄が好きなんです。生涯、耳だけ作り続けた彫刻家で、金属製の1.5メートルぐらいのリアルな耳がパリのポンピドゥー(ポンピドゥーセンター国立近代美術館)にもありましたからね。気持ち悪いんですよ、気持ち悪くてかっこいいんですよ。そういうアーティストに対するあこがれもありますね。

ホビー業界はすごいことになってますよ

では粘土のお話に戻りまして、作品はお家にいらっしゃるときにつくるんですよね?

基本的にはそうですね!ほんとに間に合わなくて、地方公演のホテルとかでつくったりもしますけど。鯛Phone5の鱗は、革に模様を付けるクラフト用の型があるんですけど、下北沢の本多劇場の楽屋で鱗の模様をつけたりしてましたね。

道具は粘土専用のものを使っているわけではないんですね!

そうですね!この「チョキ」の手の内側なんかは彫刻刀じゃ彫れないので、歯医者のギュイーンてやるやつで。
ほかにも特殊な精密ドライバーを使って模様をつけたり……めんどくさいんですよ~!めっっっちゃめんどくさいんです!絵のね、8倍以上はめんどくさいですね。どんな道具を使ったとしても、手間はほぼ変わらないです。

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ご自宅には制作専用のスペースがあるんですか?

それがね、六畳間でやっててちょっと狭いな-って。作業場を借りたいんですけどねー。
でもあんまり家から遠いとあれだし、全然儲かってないし。

六畳間はどんなレイアウトなんですか?

机があって、机の引き出しは全部塗料が入ってます。机の左側に小さな作業用のワゴンもありますね、美容室に置いてあるようなワゴン。周りには資料の本がわーっと置いてあって、動く場所がないから、がんばって椅子にはまり込んで作業してます(笑)。狭いのもいいんですけどね、道具にすぐに手が届くから。

道具は頻繁に買われるんですか?

好きなんですよ、買うのが。世界堂とかハンズとか行って、何かに使えるんじゃないかなと思って買って、だいたいは使わないですね(笑)これ10年以上触ってないなーってやつがいっぱいあって、捨てられないからしまっておくんですけど、欲しいときにどこに置いたか分からなくなる(笑)
新宿行くと、世界堂、オカダヤには行きますね。あとユザワヤも。あとはシマホとか、大工センターとかの、ホームセンターにも行きます。郊外のジョイフル本田に行くとね、もうどこにも売ってないものばっかり売ってたりしますから。ネットで買おうと思ったら買えるんですけど、実際見て買いたいんですよねえ。

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最近手に入れた道具で「これすごいなー!」って道具はありますか?

今使ってる塗料ですね。ロード・オブ・ザ・リングとかのテーブルゲームをつくってるゲームズワークショップっていうイギリスの会社があるんですけど、そこが出してるシタデルカラーっていう水性のアクリル絵の具がものすごくいいですね。

日本製の塗料だと、容器はだいたいチューブか瓶なんです。でもシタデルカラーは蓋がパカっと開いてパチンと閉じるから、扱いやすいんですよねえ。そのまま使えるんで、パレットいらなくて便利です。塗料自体の練り具合もチューブと瓶の中間ぐらいのちょうどいい感じなんです。しかも色数がものすごいあって、スカルホワイトとかミスリルシルバーとか、名前がかっこいいんですよ。「ケイオスブラック!!」みたいな、ちょっとファンタジーな名前で(笑)

不透明色、半透明、透明色があって、サンゴラスのこういう細かい色味も出るんですよね。
シタデルカラー、すごくいいんですけど、こんなちっちゃいのに1個400円とかするんですよ。ムカつくんですよ~。たけえなーっつって。しかも全然置いてない。模型ファクトリーか、秋葉原か御茶ノ水にしか売ってなくて。

買い増してるうちにすごく色が増えてきませんか?

僕全色セット買ったんです最初に。4万…違う、6万くらいしましたね、100色以上あるセット。
まあ実際は30色くらいしか使わないんですけどね。それでいざ使いたいなって思った時にはカッチカチに固まってて「なんで固まってんだよ~!」ってことがあるんですよねえ。

この「炎天剣・ギリギリ君」で使ったキラキラの粉もよかったなあ。絵の具塗ったところにパーってふりかけるとくっつくんですよ。ただ、部屋中粉だらけになりましたけど……。大変ですよ、顔にも付いちゃって、アイシャドウしてんのかなって感じになりました(笑)

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実験的に画材を買ってみることも多いんでしょうか。

好きですね~。ホビー業界はすごいことになってますよ。プラモデルのパーツをきれいに切断するための薄さ0.何ミリっていうノコギリがあったり。ランナーからパーツを切り離す時に、刃が分厚いと結構削れちゃうんですよね、それが出来るだけ少ないほうがいいから薄いのがいいんです。そのノコギリで試しにパテを切ってみたら刃がぐにゃーっと曲がってね……ちっちゃいノコギリが3000円くらいするのに一発で曲げちゃうとか、失敗ばっかりですよ。

道具マニアなんですね。

マニアですね!ヘラとかスパチュラとか、山ほど買います。スパチュラはもともと歯科技工士さんが歯石とったりする時に使う道具なんですけど、シルバーアクセサリーをつくる人なんかがロウ型を削るために使うんです。

種類がいっぱいあって値段もピンきりで、見た目全く同じなのに1000円位で買えるやつと3000円ぐらいするやつがあったりして、何が違うかわかんないんですよね。おんなじメーカーのやつ両方買ってみたんですけど、安いほうが使いやすかったです(笑)

もう本当に全然わかんないんですよ、わからない~!!でもそういうのが楽しいんですよね。
筆とかも今すごいことになってるんですよ、プラモデル用の筆なのに「熊野筆」って書いてあるんです。熊野筆って言ったらメイクとかで使うすっごい高級な筆じゃないですか。それがドライブラシ専用の筆として出てるんです、ハセガワから。これがすごく良いんですよ。
ドライブラシはね、いいんですよ。立体的に見せるために、ヘリだけにつけると立体感が増すんですよ。

ベースの色を塗って乾かしてから、ハイライトの白なんかをね、ほぼ拭きとって付かないくらいの少量を出っ張りにサササっと。

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